2012.11|「I Love Kyoto Kaikan」運営人河本順子さんインタビュー公開中

11.28.2012

QC3|11 河本順子「京都会館建替え問題から見る「京都」」



5/5 <「そんなこといくらしても人のつながりは生まれない」という声>
最初にもどる
--




現在の第一ホールと京都市設計案の比較断面図 資料作成:長崎和平


―活動を続けられて、ウェブサイト以外にこういうところに手が伸ばせたら、と思われることはありますか?


実際に京都会館を私たちが使うということをもっとすればよかったと思います。現在「ナイトピクニック」と称して、満月の夜、京都会館の中庭に三々五々に集まって話をしたり、思い思いに楽しむという企画を継続中です。時にはお茶会になったり、ギターを弾く人が現れたり、建築の専門家がふらっと来てくださって建築ツアーが始まったり、楽しいですよ。全く知らない方がウェブサイトの告知を見て来てくださって、交流が始まることもあります。

京都会館の良さは、言葉や写真でもある程度は説明できるかもしれませんが、体験するのが一番だと思います。それは建物を見学するなどでもいいかもしれませんが、建築に興味の無い方もいらっしゃると思います。そういう人でもその場所を自分が実際に使ってみるというか、占有してみると、見え方が全く違ってくるんです。そうした積み重ねが建築や町との関わりの中でもっと必要な気がしています。



失われるシーン:第一ホール周囲の景観に配慮して高さを抑えた勾配屋根


ピクニック以外では、以前岡崎活性化ビジョンの市の職員さんに来ていただいて意見交換会をしたり、ヒューマンチェーンで京都会館を囲んだこともありました。


―ブログについては、どういう反応がありましたか?


いろんな方から、京都会館のこういう記事がありますよ、とか、こういう会議が開かれますよ、とか、メールをいただくことがあります。また、協力したいからチラシや署名用紙を送ってくれというご依頼ももらいます。

ウィーンでこのブログを読んでくださった方から突然メールがあり、許可を得て、掲載をさせていただきました。その後連載になっています。「ヨーロッパからの手紙」というものです。建築に携わられている方で、ブログをみてこの問題の動向をとても気にしてくださってるようです。これはウェブらしいなと思いました。



ヨーロッパからの手紙(参照


それから、一刻も早くこの件を伝えたいとがんばって運動している人からすると、私のブログはわかりにくい、と。それから感情が伝わりにくいからダメだということを言われたこともあります。主張が見えてこないということです。


―でも意図的にそのあたりの主張は入れないようにされているわけですよね。


そうそう。でもそれは一緒に運動をしている人には伝わりにくいというんだなということが分かりましたね。今は時間も経ちましたから、「情報を集めているのね」と理解してくださっていますが、「わかりやすく伝えてくれ」ということはよく言われました。

パッと見てわかる言葉が方法論として必要なのは痛感していますが、パッと見てわかるってどういうことなんだろう、と思ったときに、その利点はあるけれども弊害もあると思ってます。Twitter「KyotoKaikanLove」もやっていますが、Twitterは一番反応がダイレクトにわかるのでいつも励まされていました。ただ、ある面、もっと表面的でない使い方をしないといけないなと、反省することも多いです。反応が多いことと運動が広がることは必ずしも一致しないというか、特に根気と理解が必要な複雑な問題については、どうしたらもっと深く知ってもらえるかということについて、いろいろ考えさせられることが多かったです。


―Twitterにはブログで掲載している情報が流れているのですか?


ブログにアップすると自動的にTwitterに流れます。あと京都会館というキーワードで検索して、京都会館について発言している人はある程度フォローというかRTはして、どういう意見があるのかをログとして残そうと思っていました。もちろん生産的なものだけじゃないですが、こういう状況だったんだなというのが見えてくると言えば見えてくるんですね。



twitter「KyotoKaikanLove」


中には「ウェブに可能性を見出していないから、なんでこんなことに時間をかけるのか率直に言って意味が分からない」ということも言われました。でも私たちの時代、こういうものを使わざるを得ない状況が一方ではあると思います。だから悪い使い方じゃなくていい使い方ができるようになればと実験中という感じです。Twitterしか見ない、携帯でしかネットをしない人もいますし。

特にネットを使わない方には、「そんなこといくらしても人のつながりは生まれない」と言われることもあります。私もなるべく実際にお会いするようにしているし、それが必要だということは分かりますが、だからといってこういうことが不要だというわけではないと思います。というか、つながりのない、独居老人や、ひきこもりもできる市民活動が、私の目指したいところかもしれませんね。


―I Love Kyoto Kaikanがきっかけになって生まれた動きはありますか?


京都会館問題のマスコットキャラ「コノママン」でしょうか。旧広島市民球場の保存運動があったときにマスコットキャラがいたらしいのですが、それを知っていた方が京都会館保存問題のマスコットキャラをつくって下さったんです。「高さ抑えて腰低く」というのがキャッチフレーズです。「コノママン」を印刷した京都会館問題のビラがあるのですが、市内でたまたま手に取った方が平面のものを立体にするという仕事をされている方で、「コノママンを立体にしたい!」と思って下さって、なんと、ついに3Dになりました。



京都会館コノママン


私はこういうこと大歓迎だと思うほうです。市の職員さんにも配りたいくらいの気持ちでいるのですが、でもこれをとある反対派の方にお見せしたら「こんなもの見せないでください!」と怒られてしまいました。「こういうことをやるから不真面目に見えるんです!」と。その方は私も尊敬している方ですし、決して頭の固い方ではありません。そういう方が言われたので、びっくりしてしまいました。全世代に受けるわけじゃないんだなと思いました。世代の違いって大きいのかもしれないですね。コノママン画像を掲載したチラシと文字だけのチラシをつくり配布をお願いすると、年配の方たちは大体文字だけの方を選ばれます。


―それでは最後に、これから「I Love Kyoto Kaikan」の展開をどうお考えかをお伝えいただけますか?


いろいろプランはあるのですが、まだまだこの問題については注視していくべき点がたくさんあります。しばらくはブログを淡々と更新していきたいと思っています。

日本イコモス委員会の第14小委員会の動向、解体工事のなりゆき、実施設計がどうなるのか、住民訴訟もあります。そして、なぜこうした問題を止められなかったのかの問題究明なども必要になってくるでしょう。せっかくこうして記録を残したので、なんらかの形でひきつづき関わっていくつもりです。(了)





--
プロフィール

河本順子
京都市在住の会社員。現代美術講座「高嶺格:アーティストワークショップ」(2006年)への参加がきっかけとなり、公共と個人の関係性について興味を抱くようになる。そのための方法論を市民の立場より考えることについての思考を継続中。台所大学picasomに参加(2010年 - )市民のための「政治」ワークショップ(2011年)グルジア椅子ワークショップ(2012年)